「深夜食堂」10周年を迎えた監督の想いとは?あこがれの“めしや”撮影現場へ!<写真15点>
いよいよ10月31日より、小林薫主演の人気シリーズ「深夜食堂」の最新作「深夜食堂 -Tokyo Stories Season2-」が、Netflixにて配信開始となった。2009年に1作目が深夜ドラマとして地上波放送を開始するやいなや、回を重ねるごとに反響を呼んだ本シリーズは、劇場版公開や海外でのリメイクを経て、ついに今回シーズン5、Netflixオリジナルシリーズとしては第2弾の配信を迎えた。今年の4月、撮影真っ只中の撮影現場で取材が行われ、10年目を迎えた本シリーズについて松岡錠司監督に話を伺った。
撮影現場に一歩足を踏み入れると、そこはまさに皆さんの知る「深夜食堂」の世界。狭い路地には味のある看板と共に小さな店がひしめき合っている。一見だけでは見落としがちな各店名にも監督の細かいこだわりがつまっているそうで、前シーズンまで「深爪」というお店が入っていた場所には新しく「笹暮れ(ささくれ)」という看板が…!各シーズンの背景に目を凝らしてみれば、思わずクスッとしてしまう小ネタが満載なのだった。
「深夜食堂」は前回のシーズン4からNetflixオリジナルシリーズとして全世界配信を開始。アジア圏だけでなく、ヨーロッパや北米なども含めた全世界にファンが急増した。ますます大きくなっていく反響について監督は、「期待していたわけでもなかったですし、こういう風に広がっていくとは予想せずにやっていましたが、『言語と食文化が違っても理解できるんだ』ということがわかりました」と驚いた心境を明かした。
その一方で、「反響を受けて作り方や内容、世界観自体は変わっていません。むしろ変えたら見てもらえなくなってしまうかもでしょ(笑)。どこの国にも庶民は居るから、庶民の生きている“風景”と“食”とを結びつけたドラマが、日本やアジアだけでなく、どこかの国で伝わるのだという自信にはつながりました。僕は“グローバリゼーション”という言葉の逆で、“ローカリゼーション”という言葉を使っています。本作で作った路地や食堂はものすごく地域性があるから、配信地域の広がりを気にしても意味がないと思うし、あくまでいままでやってきたことを続けていきます」と、製作への変わらない姿勢を語る。
第1弾のスタートから10年という大きな節目を迎える今年、新シーズンはやはり思い入れも格別だっただろうか。「いま思い返してみると、脚本作るときの時間は今回が一番長いかな、11か月くらい。途中で飽きてしまいましたからね(笑)。『深夜食堂』の世界はそれなりに理解しているという自負があるので、手を抜くことができないんです。ドラマの1話1話が個々のテーマをもって、それぞれ粒立ったものにしなきゃいけないという使命がある。もう少し気軽だったシーズン3までよりは、シーズン4でNetflixになってから、より深みを追い求めています。1話を考える毎に、映画を考えるときとほぼ等しい濃度で内容を考えている。今回のシーズン5は一番考えましたね。ここまできたらあとは皆さんが完成度を見て判断してくださるしかない、と思っています」
地上波放送ではなくNetflixという配信だからこそ、いつでも何度でも、繰り返し楽しめるようになった「深夜食堂」について、新シーズンを楽しみに待っているファンや、未だ作品を見たことがない人々へ一言をいただいた。「Netflixになってからは、ループして見る人とか、劇場版で初めて見た人がドラマをシーズン1から振り返るとか、地上波放送だけのときより観客層が多彩になりました。仕事の時にちょうどいいBGMとして流してくれる人や、酒を飲みながら見たい人もいる。シラフで見てよって思ったりもするけれど(笑)、劇場ではないから、いろんな環境やシチュエーションでみんなが見てくれている。なにかキャッチフレーズを考えるとすれば、いろんなかた、まだ初見のかたも集まってずっと入っていられる、 “足湯”みたいな作品かなと(笑)。というわけで、安心感のある感じを楽しんでください!」
撮影セットの傍らでは、10年を共にしたお馴染みのメンバーが、顔を揃えて談笑している様子も。そんな役者たちを暖かく見つめながら寡黙に休憩を取る小林の姿には、まさに“めしや”のマスターの姿が重なって見えた。
監督自身が語るように1話ごとに物語の深みを追求した「深夜食堂」は、いつ見ても、どの回から見ても、鑑賞後の満足度は間違いなし!新シーズンも、美味しそうな料理の数々と暖かい人間ドラマで“足湯”のように癒やされそうだ。
取材・文/編集部